薬が特許で守られる期間は?(特許とジェネリック医薬品との関係)
桃栗三年柿八年、医薬品は16年で特許は20年?
ライセンスバンク代表の山本英彦です。
特許の一生
先日、薬局関係の方との打ち合わせのときの雑談で、薬剤師のクライアントから
「医薬品(新薬)の開発は、発売までに平均16年くらいかかるのですよ」と聞きました。
長いな~。「桃栗三年柿八年」だな~。
と思いました。
果樹を植えたら、食べられる実がなるまでに相当の歳月を待たねばならないことから、
何事も成就するまでにそれ相応の年月がかかる、との意味だそうです。
特許も、取得するまでに相応の期間がかかります。
申請から登録までに5年くらいかかるのが一般的なイメージなので、
桃栗と柿の間くらいですね。(笑)
ちなみに、タイトルにある「特許は20年」というのは、特許が出願から消滅するまでの期間を示しています。
特許の一生を時間系列で示すと
出願→登録(実がなるまでに5年)→消滅(枯れるてしまうのに20年)
といったところでしょうか。
登録から消滅までに15年くらい特許が生きているので、その間は、特許で商品を独り占めできるわけです。
医薬品の承認と特許の期間
最初紹介した新薬の開発について説明します。新薬開発スタートの時に特許出願をしたと考えてみましょう。
商品販売までにおよそ16年かかるので、10年近くは特許があっても、新薬を売れない期間になります。
すると、特許の消滅(出願から20年)までにわずか4年しか独占して販売できる期間がないことになります。
ジェネリック医薬品というのは、特許が消滅するのを待って販売された医薬品を言います。
ジェネリック医薬品の方が薬の単価は下がって、医療費の面からは患者さんに良いのようにも感じます。
また医療財政が逼迫している中では理解されるのでしょう。
ただ、新薬開発をしている企業としては、「投資回収が十分できる可能性があること」を前提としての開発でもあります。
「薬価」というのを御存知でしょうか。厚生労働省が設定する薬の値段であり、それらを基に「新薬開発は辞めよう」とか、
「新薬開発の件数を抑えよう」といった方針になり、必要な新薬が開発されなくなってしまいます。
そうすると、必要な新薬が生まれなくなり、世界中で困る人がでてきてしまいます。
実は、新薬については、そのような背景もあることから、先発メーカが投資回収をできる期間を考慮するため、
特許消滅を最大5年延長できる制度が設けられています。
そこで、特許権の延長制度を利用すると、10年近く(4年+5年)先発のメーカが独占販売できることになります。
そうすることで、先発メーカの投資回収がしやすくなり、積極的な新薬開発ができるようになりますよね。
一方で、延長の期間を、仮に10年としましょう。
そうなると独占できる期間が長くなるので、薬の値段が下がらず、医療費の高騰につながります。
そういったバランスを取るための特許の延長制度は考えられているのです。
医薬と特許の関係
ところで、いま新型コロナウィルスが流行しており、従来のインフルエンザワクチンに加え、様々な試薬、検査薬も作られています。
ライセンスバンクのメンバーに医療製薬業界に詳しいものから、「ジェネリック医薬品」につき、特許切れ医薬品を疑問の声があります。
「特許をもつ先発品(薬)とジェネリック医薬品は全く同じなのか」は甚だ疑問であり、慢性疾患に対応した薬の提供にも配慮が必要だそうです。
新薬開発を進めやすくしたり、ジェネリック医薬品で医療費の高騰を抑えたりと、
特許の制度内でバランスがとられているというのは、とても面白いと思います。
特許制度には、世の中の経済活動を円滑にする一面もあるのです。
もし、そんな特許に興味をもたれましたら、ライセンスバンクの無料のWEB特許診断をぜひご活用ください。
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